生きる理由

 なぜ人は生きるのかという問題は、年代を問わず人々を悩ませる。生きる理由とは何なのか。そもそもその答えは存在するのか。

 まずは生物としての人間という観点から考えてみよう。人間は、人間という前にまず生物である。そして、生物の生きる目的とは、自らの遺伝子を後世に残すことに尽きる。これに依ると、生物の一種である人間の生きる目的も、他種の生物と同じく、自らの遺伝子を後世に残すものであると考えられるだろう。

 実際に、これで多くの人間の感情、行動を説明できる。例えば、セックスに快感を覚え子供を育てるのは、明らかにこの原理に則するものだろうし、腹が空くと食欲が湧くのも生存本能によるものだ。

 しかし、人間の行動には、この原則では説明できないものもある。例えば、自殺や過労死だ。人間以外の動物が、果たして、生きるのが辛いからという理由で自害したり、体力の限界を超えて働き死亡したりするだろうか。無いだろう。このように、人間は、後世に遺伝子を残すという目的にそぐわない行動を取ることが多々ある。

 人間の生きる目的は、他の動物のように単純ではないのだ。

 人間は、自らが納得する信条に従って生き、死ぬ動物であるとも言えるかもしれない。そして、その信条が生物的な本能よりも優先される場合、生物的には不自然であるが、それ故にこそ、人間的であると言える行動を取ることがしばしばあるのだろう。